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サンショウを与えたマウスは能力が2倍に

大建中湯がアセチルコリンの放出を介して腸管の機能を改善するのなら、脳でも同じようなことが期待できるかもしれません。もしそうなら、認知症の改善に大きな光明になります。

認知症の一つ、アルツハイマー型認知症の患者は、海馬のアセチルコリンの伝達能力が低下しています。実際、国内で初めて開発されたアルツハイマー治療薬であるドネペジル(商品名アリセプト)は、アセチルコリンの分解を抑え、海馬のアセチルコリン濃度を高める薬です。

帝京平成大学教授の矢野眞吾先生たちは、はたして本当に大建中湯で記憶が改善するか、マウス(実験用のネズミ)を使って実験を行いました。

結論を先に言いますと、大建中湯は、後退した記憶を改善する作用はそれほど大きくなかったものの、新たに記憶・学習する能力を高める作用があることがわかりました。そしてその作用をもたらすのが、サンショウに含まれる成分だったのです。

矢野先生たちが行ったのは、次のような実験です。

直径1mほどの円形プールに水を満たし、中にプラットホ-ム(足場)を隠します。プールの東西南北4方向からマウスを放し、プラットホームに到達するまでの時間を計ります。

1日目は、時間がかかりました。しかし、2日目、3日目と実験を続けるうちに、学習能力がつき、到達時間はだんだん短くなっていきます。

この実験を、何も与えないマウス(コントロール)と、サンショウを与えたマウスで行い、かかった時間を比較しました。すると、1日目にして、到達時間が約2分の1まで短縮されたのです。

2日目以降、コントロールのマウスの到達時間も短くなりますが、それ以上にサンショウを与えたマウスは短い時間でプラットホームまで到達できました。その差に統計的な有意差があり、サンショウには記憶や学習能力を高める効果があることがわかったのです。

認知症の改善に大きな光明になります

漢方に、大建中湯というおなかの薬があります。これは、山椒、乾姜(干したヒネショウガ)、人参、膠飴(水
あめ)という4つの生薬(漢方薬の原材料となる天然物)を配合した薬で、消化管の低下した機能を高めたり、
過度に克進した機能を鎮めたりする作用があります。

この薬の主な適応症は、イレウス(腸閉塞)です。ガンなどの開腹手術後はイレウスが起こりやすくなりますが
、その予防や治療に効果があることが報告されています。

10年ほど前、帝京平成大学教授の矢野眞吾先生たちはこの薬の別の使い方を検証していました。可能性として、
高齢者の便秘や、モルヒネの副作用による便秘の改善などが考えられました。しかし、検討を重ねるうちに、思
いがけない用途が浮かび上がってきたのです。それは「記憶力の改善」という、消化管とはかけ離れた可能性で
した。

大建中湯が消化管を活性化するのは、神経伝達物質のアセチルコリンが放出されて、自律神経(内臓や血管の働
きを調整する神経)のうちの副交感神経系(心身をリラックスさせる神経)を刺激するからです。このことはす
でに、帝京大学市原病院の研究でわかっていました。

一方でアセチルコリンは、記憶の形成にも深くかかわっています。記憶の中枢は、脳の海馬というところです。
アセチルコリンは海馬の神経細胞を活性化して、記憶や学習能力を高める働きがあるのです。

大建中湯がアセチルコリンの放出を介して腸管の機能を改善するのなら、脳でも同じようなことが期待できるか
もしれません。もしそうなら、認知症の改善に大きな光明になります。

サンショウは少量ずつ使ってこそ効果が得られる

さて、サンショウで血行が促されると、ほかにも注目すべき効用が得られます。それは、間接的に便秘の解消にもつながるということです。

便秘の解消に、ウオーキングなどの適度な運動が効果を発揮することはよく知られています。これは、適度に運動することで全身の血行がよくなり、消化器の血液循環もよくなるからです。すると、腸の働きが活発になり、便秘の予防・改善につながるのです。

ですから逆に、運動不足の人や運動量が低下しやすいお年寄りは、どうしても慢性的な便秘に陥りやすくなります。

その解消には、もちろん運動を心掛けることが重要なのは言うまでもありません。併せて、食物繊維の多いものを取ることや、規則正しい生活を送ることも大切です。

しかし、それらをなかなか十分にはできないから困っているという人や、できる範囲でやっても便秘が解消できないという人は、補助として、ぜひサンショウの摂取を心掛けてみてください。すると、サンショウが腸をはじめどする消化器の血行を促し、便秘の改善を後押ししてくれるでしょう。

サンショウは、普段、ウナギのかば焼きくらいにしかかけない人が大部分でしょう。しかし、昔はもっといろいろな料理に使っていました。運動不足による血行不良や便秘に陥りがちな現代人こそ、サンショウを取る機会を増やすといいでしょう。

使い方は簡単で、みそ汁やおひたし、冷ややっこ、湯豆腐、漬け物などに、好みに合わせて少量をふりかければよいのです。魚の煮物や肉料理などに、臭み消しと殺菌を兼ねて使うのもいいでしょう。

ただし、サンショウのような香草科は、少量ずつ使ってこそ効果が得られます。体にいいものだからと、一度に多量に取り過ぎると、刺激が強過ぎて消化器の壁を荒らしたり、胃潰瘍の危険性が増したりすることもあります。