サンショウは新しい知識を学習するときに役立つ可能性がある

帝京平成大学教授の矢野眞吾先生たちは、はたして本当に大建中湯で記憶が改善するか、マウス(実験用のネズミ)を使って実験を行いました。そしてサンショウには記憶や学習能力を高める効果があることがわかったのです。

さらに、その働きを持つ物質も特定できました。ヒドロキシーサンショールという成分です。投与量は、体重1kg当たり数mgというわずかな量で有意差が認められました。これは医薬品レベルの微量な量です。

しかし、この物質が確かに脳で働くためには、血液脳関門という脳の関所のようなところを通り抜け、一脳のコリン作動性神経(アセチルコリン含有神経)にまで到達しなければなりません。私たちはそれも確認しました。マウスの脳を調べると、確かにサンショウ関連成分が、脳組織に到達していたのです。

サンショウは、子どもが九九を覚えるというように、新しい知識を学習するときに役立つ可能性があります。実験で見たように学習効果が早いので、特に試験の前の一夜漬け勉強などには威力を発揮するかもしれませ
ん。また、高齢者の健忘症も、海馬のアセチルコリン濃度が高くなれば改善する可能性があります。

サンショウは、漢方では芳香性健胃薬として知られていますが、脳への作用はほとんど報告がありません。しかしこの実験で、また一つ、サンショウの新しい可能性が広がりました。

ただ、サンショウには独特の辛味やしびれ感があります。子どもやお年寄りには食べにくい食材ですから、どのようにして食べやすくするか、それが、これからの課題かもしれません。