サンショウというと、かば焼きの薬味くらいしか思い浮かばない

「小粒でもビリリと辛い」という言葉どおり、サンショウは見かけに似合わず、小粒ですが私たちの健康に役立つ貴重な力を秘めており、漢方では古くから活用されているのです。

サンショウはミカン科の植物の果実で、漢方では山椒とか濁椒、川椒とも呼ばれ、今から2000年ほど前、中国・後漠の時代に編纂された医学書『金匿要略』にも紹介されています。

薬性は熱、薬味は辛、帰経(作用する部位)は脾・胃・肺・腎。主に、次の三つの症状に用いられます。

・冷えを解消して、体を温める。

・腸内にいる回虫などの虫を駆除する。

・胃腸の動きをよくして、ガス腹や便秘を改善する。

このサンショウの薬効や特性をメインとして処方された漢方薬の代表が、最近日本だけでなく、アメリカでも注目を集めている大建中湯です。

注目されている理由は、冷え腹、ガス腹で腹痛があるといった症状だけでなく、過敏性腸症候群や潰瘍性大腸炎、クローン病といった原因不明のおなかのトラブルにまで、大建中湯がとてもよく効くからです。

ちなみに、大建中湯の「中」はおなか(胃腸)のこと。その名のとおり、「大いにおなかを建て直す薬」なのです。大建中湯はサンショウのほかに人参、乾姜、膠飴の4種の生薬(漢方薬の原材料となる天然物から処方されています。

人参は新陳代謝を促す作用があり、胃腸の消化吸収を活発にします。乾姜は、干したヒネショウガのこと。発汗作用に優れ、冷えや嘔吐などの胃腸機能低下などに効果があります。膠飴は、いわゆる水あめのこと。麦芽糖から作られ、息切れなどの症状の改善や滋養強壮に働きます。

大建中湯は、サンショウの腸管刺激作用を中心に、これらの生薬が協調して働くことで、腸内のガスの吸収を促進したり、停滞している腸のぜんどう運動(腸が内容物を肛門のほうへ送る動き)を活発にします。

その結果、おなかがゴロゴロしたり、ガス腹や便秘、オナラが止まらないといった腸の異常症状を改善していくのです。特に、腸の手術後に現れがちな腸閉塞などの異常症状の治療には顕著な効果があることが、昌平クリニック院長の鍋谷欣市先生たちの研究でも明らかになっています。