手浴・ひじ浴は、体が急に冷えてしまったときの応急処置に効果的

◇冷えは放置すると慢性化してしまう

東京・青山鍼灸院では、体を温めることを重視した治療を行っています。

冷えのある部分は血行が悪くなり、筋肉も硬くなっているので、十分な治療効果が得られません。さらに、低体温だと免疫力(病気に対する抵抗力)も低下してしまいます。

院長の青山貴子先生は、患者さんたちにも、日常生活で「体を冷やさないこと」「冷えたらすぐに温めること」を心掛けるよう指導しいます。体の中でも、特に「五つの首」(首、両手首、両足首)を冷やさないことが肝心です。

体の冷えは、洋服に付いたシミのようなもの。付いたその場で処置すればきれいに取れますが、放っておくと布に染み込んで、なかなか取れなくなります。体の冷えも同じで、放置すると体の奥深くにまで染み込んで、冷えが慢性化してしまい、取れにくくなるのです。

しかし、いくら体を冷やさないように気を付けていても、寒い場所で長時間過ごした後などは、体が芯から冷えてしまうことがあります。すぐに体を温めたい。家に帰ってからお風呂に入るのでは手遅れで、このままだとカゼをひいてしまう。

そんな緊急事態のとき、洗面台や流しで手軽にできるのが、「手浴・ひじ浴」です。手浴・ひじ浴のやり方はとても簡単。

まず、食器の洗いおけや洗面器に、40~42℃くらいの熱めのお湯を入れます。そこに、両手を指先から手首の上5cmくらいまで浸します。そのまま5分ほどじっとしていると、体がじんわりと温かくなってきます。

手が温まったら、次に、両ひじをお湯に浸します。こうやって手浴→ひじ浴の順に各5分ずつ交互に行うと、全身が汗ばむほど温まり、冷えがすっかり取れてしまいます。

手浴だけではなく、ひじ浴も行うことがポイントです。自分ではなかなか気付きませんが、体が冷えているときは、ひじから二の腕の部分も冷たくなっています。この部分が冷えると、カゼをひきやすいのです。

青山先生自身、手浴・ひじ浴の効果を実感した出来事があります。数年前に、春先に競技場でサッカーを観戦したときのことです。薄手のジャケット1放で、4時間以上も屋外で立ちっ放しだった青山先生の体は、芯までガンガンに冷え切ってしまいました。

試合後、「このままだと高熱が出てしまう」と不安を抱きながら、急いで鍼灸院に戻りました。そして、流しに直行し、洗いおけに熱めのお湯を入れて手浴・ひじ浴をしたのです。

15分ほどたったころ、体が温まってきて、おでこから汗がじんわりと出てきました。すると、まるでなだれが起こったかのように、体からドドーッと一気に冷えが出ていったのです。

体はポカポカ。まるで春が来たかのように温かくなつていったのです。その後、家に帰ってお風呂でしっかり温まり、翌日は熱も出ず、カゼもひかずに過ごすことができました。手浴・ひじ浴をせず、家で入浴するまで冷えを放置していたら、熱を出して寝込んでいたでしょう。

◇ストレスを軽減し頭痛や不眠にも効く

手浴・ひじ浴は、体が急に冷えてしまったときの応急処置のほか、慢性の冷え症や、肩こり・首こり、目の疲れ、体のだるさなどにも効果的です。

首や肩がこったとき、こりのある部分をもんでほぐそうとする人が多いですが、こっている筋肉をもむだけでは効果が薄いのです。

肩や首につながる経絡(生命エネルギーである気の通り道)は、手から腕、肩、首へと流れています。したがって、まずは経絡の末端に当たる手を温めることが大切です。末端を温めて循環をよくした上で患部をもむと、筋肉のこりがほぐれやすいのです。

また、手のひらの中央には、自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経)の調整やストレス軽減、頭痛、不眠、慢性疲労などに効果のある労宮(ろうきゅう)というツボがあります。

手の甲の、親指と人さし指の付け根の骨が合わさるところにある合谷(ごうこく)というツボは、頭痛や眼精疲労のほか、万病に効くツボとされています。

手首の周辺にも、不眠や動動悸に効果がある神門(しんもん)や、呼吸器系疾患に有効な太淵(たいえん)などの、重要なツボがたくさんあります。手浴・ひじ浴は、これら手や手首周辺のツボを温めて刺激することができるので、さまざまな効果が期待できるのです。

全身浴や足浴は、体を温めるよい方法ですが、いつでも気軽にできるわけではありません。その点、手浴・ひじ浴は衣服を脱がなくても、外出先でも洗面所や流しで手軽にできるのが大きなメリットです。

体の冷えを即効で解決できる方法として、ぜひ覚えておいていただきたいと思います。