高齢者の場合むやみに血圧を下げすぎるのは危険

◇最大血圧と最小血圧の差が大きいと危険!

大阪大学医学部では、2010年から高齢者の健康長寿の要因を長期にわたって調査する研究(SONIC研究)を行っています。調査対象は、70代、80代、90代、100歳以上の高齢者約2500人です。

この研究により、世界的にも貴重な90歳以上の血圧データが明らかになってきました。

研究では、最大血圧の平均は、70歳で140mmHg、80歳では147mmHgと、年齢とともに高くなっています。一方で、最小血圧はだんだん低くなる傾向にあります。

最大血圧は、心臓が収縮して血液を送り出すときの圧力で、最小血圧は、心臓が収縮後に広がるときの圧力です。最大血圧が高くなるのは、血管がかたくなり、血管への抵抗が高まるからです。一方、最小血圧が低下するのは、かたくなった血管が伸び縮みできなくなるからです。

つまり、加齢に伴う高血圧で心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まるといわれるのは、最大血圧と最小血圧の差(脈圧)が大きくなることが問題なのです。

 

 

そして、これまでは年齢が上がるにつれ、最大血圧はどんどん上昇していく傾向にあるのが一般的と考えられていました。

ところが、90歳以上の血圧を調べてみると、90歳では最大血圧が平均140mmHgと、80歳よりも低く、100歳以上になると平均129mmHgまで下がっていることがわかったのです。

今後、追跡調査をしてみないと明確にはいえませんが、特に後期高齢者(75歳以上)の場合、最大血圧が140mmHgを超えていても、治療によって無理に下げる必要はないのかもしれません。

現実に、最大血圧が170mmHgある70~84歳の人を対象に、最大血圧を140mmHg未満まで厳格に下げた群と、140~149mmHgでコントロールした群で、心筋梗塞や脳卒中の発症率を比較したところ、両者に有意差(偶然ではない差)はなかったという研究データもあるのです。

 

 

アメリカの研究では、1秒間に0・8m以上歩けない虚弱な高齢者の場合、血圧が正常な人より、140mmHg以上ある人のほうが、予後がいい(長生きしている)という報告もあります。

また、後期高齢者は最大血圧が120mmHg未満になると、心筋梗塞や脳卒中がふえるという日本の研究結果も発表されています。

もちろん、動脈硬化が進んでいる人も、血圧を下げすぎるのは危険です。例えば、首の左右にある太い動脈(頚動脈)の両側に70%以上の狭窄(狭くなること)があると、最大血圧を150mmHg未満に下げたら脳卒中の危険性が増すことがわかっています。

狭心症や心筋梗塞などがある人は、降圧剤を用いて最小血圧を70mmHg以下にしてはいけないともいわれていきす。

いずれにしても、高齢者の場合、最大血圧も最小血圧も、むやみに下げすぎるのは危険といえるでしょう。

→複数の薬をたくさん服用している高齢者に特に多く見られる「薬剤性高血圧」にも注意