複数の薬をたくさん服用している高齢者に特に多く見られる「薬剤性高血圧」にも注意

◇痛み止めを飲むと血圧が上がってしまう

高齢者の場合、最大血圧も最小血圧も、むやみに下げすぎるのは危険といえます。

もう一つ注意しなければならないのは、薬の影響で血圧が高くなる「薬剤性高血圧」です。これは、複数の薬をたくさん服用している高齢者に特に多く見られます。

例えば、ひざの痛みや腰の痛みを緩和させるために、痛み止めを飲んでいる高齢者はたくさんいるはずです。非ステロイド性抗炎症薬といわれるこれらの薬は、血圧を上昇させるほか、降圧剤といっしょに飲むと、その効果を減弱させる作用があります。

漢方薬の多くに含まれる成分の「甘草」も、血圧を上げる作用があります。これは、市販のサプリメントなどにも含まれていることがあるので要注意です。

 

 

ほかには、ガン治療などに用いられる免疫抑制剤、ホルモン療法に使われるエストロゲン、抗うつ剤など交感神経を刺激すみ作用のある薬も、薬剤性高血圧の原因になります。

このような薬が原因で血圧が高くなっている場合は、やみくもに薬で血圧を下げるのではなく、まず高血圧の原因となっている薬の服用を中止するなど、医師の的確な指導が必要です。

また、降圧剤は一生飲み続けなければならないと思っている人も多いようですが、決してそのようなことはありません。生活習慣に注意して血圧が下がってくれば、薬をへらすことや、最終的には薬をやめることも可能です。

血圧を上げないために生活習慣で心がけるべきことは、塩分を控えめにすること、果物などでカリウムを補給すること、適度な運動をすることです。

高齢になると運動をするのはなかなか難しいかもしれません。それでも、家の中でこまめに動いたり、ちょっと買い物に出たりするだけでも違います。

最終的には薬がいらなくなることを目指して、日常生活の中で、できることに取り組んでほしいと思います。

→高齢者の場合むやみに血圧を下げすぎるのは危険

 

 

高齢者の場合むやみに血圧を下げすぎるのは危険

◇最大血圧と最小血圧の差が大きいと危険!

大阪大学医学部では、2010年から高齢者の健康長寿の要因を長期にわたって調査する研究(SONIC研究)を行っています。調査対象は、70代、80代、90代、100歳以上の高齢者約2500人です。

この研究により、世界的にも貴重な90歳以上の血圧データが明らかになってきました。

研究では、最大血圧の平均は、70歳で140mmHg、80歳では147mmHgと、年齢とともに高くなっています。一方で、最小血圧はだんだん低くなる傾向にあります。

最大血圧は、心臓が収縮して血液を送り出すときの圧力で、最小血圧は、心臓が収縮後に広がるときの圧力です。最大血圧が高くなるのは、血管がかたくなり、血管への抵抗が高まるからです。一方、最小血圧が低下するのは、かたくなった血管が伸び縮みできなくなるからです。

つまり、加齢に伴う高血圧で心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まるといわれるのは、最大血圧と最小血圧の差(脈圧)が大きくなることが問題なのです。

 

 

そして、これまでは年齢が上がるにつれ、最大血圧はどんどん上昇していく傾向にあるのが一般的と考えられていました。

ところが、90歳以上の血圧を調べてみると、90歳では最大血圧が平均140mmHgと、80歳よりも低く、100歳以上になると平均129mmHgまで下がっていることがわかったのです。

今後、追跡調査をしてみないと明確にはいえませんが、特に後期高齢者(75歳以上)の場合、最大血圧が140mmHgを超えていても、治療によって無理に下げる必要はないのかもしれません。

現実に、最大血圧が170mmHgある70~84歳の人を対象に、最大血圧を140mmHg未満まで厳格に下げた群と、140~149mmHgでコントロールした群で、心筋梗塞や脳卒中の発症率を比較したところ、両者に有意差(偶然ではない差)はなかったという研究データもあるのです。

 

 

アメリカの研究では、1秒間に0・8m以上歩けない虚弱な高齢者の場合、血圧が正常な人より、140mmHg以上ある人のほうが、予後がいい(長生きしている)という報告もあります。

また、後期高齢者は最大血圧が120mmHg未満になると、心筋梗塞や脳卒中がふえるという日本の研究結果も発表されています。

もちろん、動脈硬化が進んでいる人も、血圧を下げすぎるのは危険です。例えば、首の左右にある太い動脈(頚動脈)の両側に70%以上の狭窄(狭くなること)があると、最大血圧を150mmHg未満に下げたら脳卒中の危険性が増すことがわかっています。

狭心症や心筋梗塞などがある人は、降圧剤を用いて最小血圧を70mmHg以下にしてはいけないともいわれていきす。

いずれにしても、高齢者の場合、最大血圧も最小血圧も、むやみに下げすぎるのは危険といえるでしょう。

→複数の薬をたくさん服用している高齢者に特に多く見られる「薬剤性高血圧」にも注意

 

降圧剤は一生飲み続けなければならないのか

◇「飲まなくてもいいけど命の保障はないよ」

「この薬を飲むようになって、体がだるくてしかたがないんだよ。朝は起きられないし、午前中はほとんど仕事にならない」

宇田川久美子さんが薬剤師として働いていたころのことです。最大血圧が160mmHgでメタボ診断に引っかかり、降圧剤を飲むようになったAさん(男性・60代)が、こんなことをおっしゃいました。

Aさんは、降圧剤を飲む前、血圧が高くてもこれといった不調はなかったそうです。そこで、Aさんに、主治医に今の状態を話して、薬について相談するようにアドバイスしました。

後日、再び薬局に現れたAさんは、主治医に相談したらこういわれたそうです。

「飲みたくなけれれば飲まなくてもいいけど、命の保障はないよ」

これでは降圧剤を飲まないわけにはいかないでしょう。Aさんは、その後も服薬を続けました。

 

 

Aさんの血圧は、確かに降圧剤で下がっています。でも、血圧が下がれば、それでほんとうにいいのでしょうか。

血圧の基準値が、最大血圧は130mmHg未満になって、50歳の人も70歳の人も、一律に130mmHgを超えると血圧が高いと注意されるようになりました。でも、年齢も体格も体質も一人ひとり違うのに、皆が同じ基準でいいのでしょうか。

そもそも基準値自体があいまいなものです。宇田川さんは、基準値から多少はみ出ていても、当人が不調を感じず、快適に生活を送れていれば、それがその人の適正値ではないかと思っています。

Aさんも160mmHgが適正値で、必要があって血圧が高くなっていたのかもしれません。それを無理に下げたら、調子が悪くなることも考えられます。

 

 

◇体に不可欠な酵素を薬は大量に仙洞費する

血圧が高くなるのには、それなりの理由があります。例えば、高齢になると、血管に柔軟性がなくなって血流が悪くなります。そのため心臓は血圧を上げて、全身に血液を回りやすくします。ですから、高齢になれば血圧が高くなるのは自然のことです。

それを薬で下げると、血液が全身を巡りにくくなります。血流が低下すれば、いちばん血液が届きにくい脳に酸素が行かなくなり、認知症になるおそれもあります。脳だけでなく、全身の細胞にも酸素や栄養が届きにくくなりますから、体調が悪くなるのは当然のことでしょう。

そもそも、薬は石油から作られた化学合成品です。体にとっては異物ですから、これを分解(解毒)するのに、大量の酵素が使われます。

酵素は、消化や代謝など、体内で起こるすべての化学反応を促進させる物質で、生命活動に不可欠のものです。この酵素を使い果たしたとき、人の寿命は尽きるといわれています。その大事な酵素を、薬は大量に消費してしまうのです。

酵素がへると、代謝が落ちて体温が下がります。体温が下がると、免疫力が低下することもわかっています。免疫力の低下は、ガンや感染症のみならず、さまざまな病気を引き起こします。薬で血圧が下がっても、ほかの病気にかかるリスクはむしろ高くなるのです。

 

 

どんな薬でも、薬には必ずよい作用と、悪い作用(副作用)があります。降圧剤の副作用についていえば、カルシウム括抗薬には、動悸や顔のほてり、むくみなど。アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬には、からセキ、血管浮腫など。アンジオテンシンⅡ受容体括抗薬(ARB)には、高カリウム血症や腎機能低下など。利尿薬には、頻尿や勃起不全などがあります。

こうした、短期的に現れる副作用も問題ですが、もっと怖いのは長期に使い続けたときの副作用です。10年、20年と飲み続けるうちに、見えない副作用がどういう形で健康を損なうのかは、検証されていないのです。

「降圧剤とは一生のつきあい」と思っている人は多いでしょう。宇田川さんも薬剤師として、そういって患者さんに薬を渡していました。でも、一生のつきあいということは、その薬では病気を治せないということです。高血圧のように、生活習慣が原因で起こる病気なら、薬ではなく、まず生活習慣を変えることです。

宇田川さんは、学生時代から30年間、堪えがたい肩こりと頭痛で、薬漬けでした。1日7種類、17錠もの薬を飲んでいたこともあります。原因は、頚椎(首の骨)のズレなので、一生治らないといわれました。けれども、歩き方や生活を変えることで、薬が不要になりました。

「一生のつきあい」といわれた薬でも、生活習慣を改めればやめられます。皆さんも薬に頼るのではなく、自分自身の治癒力を信じて、まず生活習慣の見直しから始めてください。